昔話に学ぶ 分福茶釜 その2 【百回の説明と一回の体験】
この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)のみんなの坐禅会(子供坐禅会)と臨済宗青年僧の会で開催しているオンライン坐禅会(子供坐禅会)を同時開催で私が話した内容をまとめたものです。
※東光寺(静岡市清水区横砂)のみんなの坐禅会(子供坐禅会)についてはこちらをご覧ください。
※臨済宗青年僧の会 オンライン坐禅会についてはこちらをご覧ください。
昔話に学ぶ 分福茶釜 その2 【百回の説明と一回の体験】

分福茶釜シリーズ その2です。
前回は和尚さんが悪い見本となって、「あれも欲しい、これも欲しい」と欲張ってしまう話しをしました。
今回は、その続きです。
残念ながら、まだタヌキ(茶釜に化けたタヌキ)は芸をしません。
そして、今回も和尚さんが悪い見本になってくれる場面です。
タヌキが化けた茶釜が少し臭いことに気がついた和尚さんは小僧さん達に「茶釜を洗いなさい」と言います。小僧さん達にとっては余計な仕事です。
和尚さんが見ていないところで、雑に洗います。
手を使うことすら面倒なので、水をかけて足でゴシゴシ洗います。
今回の教訓は「大切な物を足で洗ってはいけない」ということではありません。
では、何を感じて学べば良いのでしょうか。
話しは続きます。足で洗っていると、茶釜が思わず「いたいなぁ」と声を出してしまいます。
小僧さん達は驚きます。喋るはずがない茶釜から声が聞こえれば多くの人が驚きます。
小僧さん達は慌てて和尚さんに報告をしました。
しかし、和尚さんは信じません。それどころか
「私も茶釜の声を聞いてみたかったなぁ」と小僧さん達に嫌味まで言いました。
そして、「心を込めずに茶釜を洗ったりするから聞こえるはずのない声が聞こえるんだ。もっと修行をしっかりしなさい。」
とまで、言うのです。
小僧さん達は、確かに茶釜の声を聞いているので納得はできませんが、和尚さんには逆らえません。
次に和尚さんは小僧さん達に「洗った茶釜を火にかけなさい。お湯を沸かしてお茶を飲んで、心を落ち着けなさい」と言いました。
小僧さん達が言われるままに、茶釜を火にかけました。
すると茶釜が「あつい あつい」と叫んで火から降りてしまったのです。
和尚さんは茶釜が喋って動いたことに驚き、茶釜を通りかかった”くず屋”さんにあげてしまったのです。
今日の分福茶釜の話しはここまでです。
この部分から何を学んだら良いのでしょうか。
それが「冷暖自知(れいだんじち)」です。
冷暖自知は禅の言葉です。
単純に説明すると、「何事も体験しなければ分からない!」と言うことです。
今回も和尚さんが悪い見本をしてくれています。
和尚さんは、小僧さん達が実際に経験したこと「茶釜がしゃべる」ということを聞いても信じませんでした。
その気持ちは分かります。
では、なぜ小僧さん達が嘘を言っているわけではないのに信じなかったのでしょうか。
それは、自分が体験をしていなかったからです。
和尚さんが、これまでに喋る茶釜と出会っていれば、小僧さん達の言うことを信じることができたはずです。
しかし、体験したことがないから、信じられないのです。
このことはとても大切なことを教えてくれています。
例えば、和尚さんが別の小僧さん達に茶釜を洗わせたらどうなったでしょう。
また、茶釜が喋ったと小僧さんが訴えても、信じません。
さらに、別の小僧さんが言っても結果は変わらないでしょう。
何回も小僧さんが訴えても、その回数だけ「心を落ち着けなさい」と言ったことでしょう。
しかし、たった1回 和尚が茶釜の声を聞けば結果は大きく変わります。
私達も、この和尚さんと同じではありませんか?
つい、自分が知っていることだけが正しいと思って判断をしていませんか。
「そうなってはいけないよ!」
と、和尚さんは教えてくれています。

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