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オンライン坐禅会 法話 賓主互換

600紅白のお餅が教えてくれた賓主互換


紅白のお餅があります。

お寺ではあまり見かけないと思うかもしれません。


この紅白のお餅をお供えするのは法事です。

驚くかも知れませんが、本当です。

もちろん全ての法事にお供えするわけではありません。



この紅白のお餅をお供えするのは、50回忌・100回忌・150回忌・・・という風に50年ごとに行う法事の際に紅白のお餅をお供えしています。

一周忌・三回忌・七回忌と法事が続いていきますが、50年目を迎えた時に、この紅白のお餅をお供えします。

私自身この習慣を知った時に少し違和感を覚えました。

亡くなった方のための法要に紅白を使うとはどういうことだろうか。




疑問を感じていましたが、初めて50回忌の法要を務めさせて頂いた時に参加された方が

「50回忌ができて本当にありがたい、幸せです。」

と一言おっしゃられたのです。



この言葉を聞いた時、「法事とはそういうことなんだ!」と感じました。



法事は亡くなった方の安らかなることを願って、今を生きる私達が行うものです。



では、安らかになるのは亡くなった方だけなのでしょうか。

「本当にありがたい、幸せです」という言葉を聞いたときに、そうではなかったのだと感じたのです。


法事は亡くなった方だけのためにあるのではなく、今を生きる私達のためにもあるのです。


私達は亡くなった方に何をしたら安らかになるかを考えます。


しかし、同時に亡くなった方も、私達の心が安らかであることを願っています。


そのことをはっきりと自覚した方の言葉が


「本当にありがたい、幸せです」


だったのです。





禅の言葉に 賓主互換(ひんじゅごかん)というものがあります。


禅語を紹介する本には


ある時は主人が客の立場になり、ある時は客が主人の立場になること。
主人と客が互いに自由自在に入れ替わること。
修行によって高い力量を身につけた禅の修行者同士が問答をして、尋ねる者と答える者とが自由自在にその立場を変えること。





といったことが書いてあります。

客とは誰かの家に招かれた人、主人とは招いた人のことです。

一般的には、はっきりとした立場の違いがあります。

しかし、相手のことを考え、相手に成りきる心があれば、お互いの境がなくなり、自由自在に入れ替わることができると言うのです。

そして、この境地に達すると、「お互いを計らずも 高めあっていく世界」となるのです。



ただ入れ替わるのではなく、互いに理解しつくした上で、高め合っていく世界が賓主互換なのです。


供養していたつもりが 亡くなった人に長きにわたって支えてもらっていた。


そのことに気がつくことが 賓主互換 であり、「50回忌ができて本当にありがたい、幸せです」という心境だったのです。



そのことが、どれだけ尊いのかは言葉では表現しつくすことはできませんが、紅白のお餅が伝えてくれているようにも感じます。


禅の言葉が示す心境は坐禅だけでなく、法事などの習慣も大切にすることで感じることができるのかもしれません。
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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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