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花が咲いていない庭に花を咲かせる

お母様を亡くされ、東光寺(静岡市清水区横砂)の本山である妙心寺での法要に参加される女性をお連れした時のことです。


道中、

「昔、母と妙心寺へ行ったとき沙羅双樹の花で有名な庭を拝見させていただいたことを善く覚えています。」

と、亡くなったお母様と妙心寺を訪ねたときのことを話してくださいました。


この庭は、妙心寺の中にある東林院の庭であり、美しい緑の苔の上に朝に咲いた沙羅双樹がはかなくも散っている姿が美しくて有名です。




妙心寺での法要が終わって道を歩いていると


「東林院 沙羅の花を愛でる会」


という看板が出ていました。




私が

「これが話して下さったお庭ではないですか?」

と聞くと

「そうです」

と、女性が答えてくれたので、さっそく拝観へと向かいました。




受付を済ませて中に入って庭を見て驚きました。

なんと、沙羅双樹の花が咲いていないのです。

例年よりも花が早くに咲いてしまったため、特別拝観期間中でしたが、花を見ることができなかったのです。





美しく手入れがされた庭でしたが、沙羅双樹の花が一輪もないことを知って、


せっかくお母様との思い出の景色を見てもらえると思っていた私は、残念やら申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいました。


呆然と立ち尽くす私に、係の方が抹茶と和菓子を運んできてくださいました。


和菓子は沙羅双樹の花をイメージして作られていました。





6001和菓子 沙羅双樹2022

この和菓子を見たときに女性が


「あ、きれいな花が咲いていますね。」


と嬉しそうに言ったのです。そして、お母様の思い出をいくつも話してくださいました。





和菓子の花を一輪の花と観て、目の前に広がる美しい庭に重ねて見ることができる女性の調った心に感動すると共に、勝手に花が咲いている期待をして、勝手に咲いていないことを裏切られたと感じて、がっかりしていた自分の未熟さを痛感する出来事でした。
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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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