逃げ切れる人の意見で政策が決まるって そもそも間違ってるでしょ
「逃げ切れる人の意見で政策が決まるって そもそも間違ってるでしょ!」
胸に突き刺さる言葉が飛んできました。
NHKの「17歳の帝国」というドラマの中で出てきた言葉です。

ドラマの説明はNHKのホームページから引用させていただきます。
舞台は202X年。日本は深い閉塞感に包まれ、世界からは斜陽国の烙印を押されている。出口のない状況を打破するため、総理・鷲田はあるプロジェクトを立ち上げた。「Utopi-AI」、通称UA(ウーア)構想。全国からリーダーをAIで選抜し、衰退した都市の統治を担わせる実験プロジェクトである。
若者が政治を担えない理由は、「経験」の少なさだと言われてきた。AIは、一人の人間が到底「経験」し得ない、膨大な量のデータを持っている。
つまり、AIによっていくらでも「経験」は補えるのだ。それを証明するかの如く、AIが首相に選んだのは、若く未熟ながらも理想の社会を求める、17才の少年・真木亜蘭(まきあらん)。
他のメンバーも全員20才前後の若者だった。真木は、仲間とともにAIを駆使し改革を進め、衰退しかけていた地方都市を、実験都市ウーアとして生まれ変わらせていく―。
といった内容です。
この中で、政治の運営を担う若者たちが議論をしていたときに先ほどの言葉が登場したのです。
1人の若者が、高齢者たちが置いてきぼりになるような政策に対して
「実際この国の4割は高齢者なわけだから 半数近くの意見は・・・」
と言いかけたときに別の若者が
「このままでも逃げ切れる人の意見で政策が決まるって そもそも間違ってるでしょ」
と言ったのです。これに対して最初に意見を出した若者は
「確かに今の問題に縛られたら 未来は見失う」
と、納得をしたのです。
この会話は、現代社会が抱える「若者と高齢者」の問題において、これからを生きていく若者の意見を象徴するようにも聞こえます。
しかし、この言葉は、ただ単に「若者と高齢者」という問題だけではありません。
私には、この言葉は”任期のある仕事”に対しても大切なことを伝えようとしているように感じました。
だからこそ、私の胸に確かに突き刺さったのです。
私自身もこれまでにいくつかの任期のある仕事に携わってきました。
お寺関係で組織する団体で4年間の会計の仕事や、オンライン坐禅会を開催している臨済宗青年僧の会の事務局員など、明確に終わりがある仕事をしたことがあります。
また、一旦受けると明確な任期がない仕事(又は明確な任期まで20年以上ある)をしています。
正直な話しをすると、4年任期の仕事をしている3年6ヵ月頃に
「あ、ここを改善したらもっと良くなる。でも、改善するのに労力が必要だ」
となったときに、
「残りの任期を少ないし、やっぱりやめておこう。変化しなくてもいいや」
という気持ちが出てきてしまいます。
任期が長い、または任期がない仕事をしていれば、「やめておこう」と思う前に一歩を踏み出せたはずなのに、終わりまでの時間を考えてしまうのに、若いも高齢も関係ないのです。
安定を望み、変化を嫌うのも人間の習性かもしれません。
しかし、仏教の大切な教えに「諸行無常【しょぎょうむじょう】」という言葉あります。
ありとあらゆるものは移り変わり、常に変わらないものなどない
という教えです。
安定を望み、変化を嫌い、何もしないことは大切な教えを無視していることに他なりません。
白隠禅師の言葉に次のような例え話があります。
「例えば、何百両という黄金があって、これを護衛させる場合に、部屋を閉旦扉を鎖して、黄金の傍に坐って、人に取られまい奪われまいと守ったとしても、これはとても気力ある者の優れた働きとは言えまい。」
それに対して
「もし、多くの盗賊が群れる中を、その黄金を持ってどこそこまで届けよと命じられた男が、胆力を発揮して刀を差して脛をかかげ、黄金を棒の先に突っかけ、たった一人で送り届け、少しも恐れる色がないならば、このような男こそあっぱれな働きの大丈夫というべきであろう。」
大切な習慣を守ることは素晴らしいことです。
しかし、大切なもの”守る”ことに固執してしまうことは、「諸行無常」を受け入れないことにつながります。
“黄金を棒の先に突っかけ、送り届ける”ことが大切であり、このことを現代の言葉で表現しているのが、
「このままでも逃げ切れる人の意見で政策が決まるって そもそも間違ってるでしょ」
という言葉のように感じます。
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