般若心経に学ぶ その8 【色不異空】

東光寺(静岡市清水区横砂)で開催されている子供坐禅会で話をしたときの原稿です。
ベランダでミニトマトを育てたことがありました。
プランターに土を入れて、苗を購入して植えました。
無事にたくさんのミニトマトができておいしく食べました。
しかし、たまに収穫前に土の上に落ちてしまうトマトもありました。
私はめんどくさがって落ちているのに気がついても、そのまま放置してしまいました。
冬になり、ミニトマトは枯れてしまったので、葉っぱや茎を処分して土だけの状態にしました。
こうすれば、次の年も何か植えられると考えのです。
しかし、春になって「何を植えようかな」と考えて始めたとき、土から小さな芽がいくつも出ていることに気がつきました。
しっかりした人なら、すぐに芽を摘み取っていくのでしょうが、ここでも「めんどくさい精神」が出てしまい、放置していました。
すると、その芽は少しずつ成長していきます。
そして、驚くことにその成長して出てきた小さな葉っぱはミニトマトの葉っぱとそっくりだったのです。
なんと、土に落ちたミニトマトの種が残っていて、その種が芽を出したのです。
そのまま、育ててみる前の年と同じようにミニトマトを収穫することができました。
般若心経には
色不異空(しきふいくう)
という言葉があります。
般若心経の言葉は全て大切な言葉ですが、その中でも特に大切にされている言葉です。
「色」とは私達は見たり感じたりしている世界のことで
「空」とは実態がないことを意味する言葉です。
ですから色不異空は
「色」は「空」と異なることがない
という意味です。
難しい言葉ですね。もう少し簡単に言うと
「色」=「空」
です。これも難しいですね。正しく理解しようとすると、たくさん勉強しなくてはいけないのですが、もっと簡単に書くと
"全てのものはいつか滅び、また生まれる しかし 同じものではない"
と言えます。
ミニトマトも土に落ちて腐りました。そして新しく芽を出し、実をつけました。
同じミニトマトがなりました。
しかし、土に落ちたミニトマトと翌年できたミニトマトは同じものではありません。
同じように、この年にできたいくつものミニトマトは、みんな同じ遺伝子を持っていますが、みんな違うミニトマトです。
極端に言えば、この現象も「色不異空」です。
これは、私達人間にも言えることです。
昨日の私と、今日の私、そして明日の私。
全員、同じ遺伝子を持っています。しかし、昨日の私と、今日の私はよく似ていても違う人間です。
昨日は知らなかったことを今日の私は知っているし、
昨日は短かった髪の毛が今日は伸びています。
爪も伸びます。
細胞も生まれ変わり死に変わっています。
同じものなど何もないのです。
このことを般若心経は「色不異空」と教えてくれているのです。
でも、「色不異空」"全てのものはいつか滅び、また生まれる しかし 同じものではない"と言われても
「だから何?」
と思いませんか。
私は思っていました。
でも、そんなに難しいことではありません。
ミニトマトがたくさんあったとします。
たくさんある時にはパクパク食べるけど、残りが少なると大切にしませんか?
同じミニトマトなのに残りが少なくなると、価値が上がるように感じてしまいます。
そんなとき、始めのうちにパクパク食べていたことを後悔します。
あのとき、もっと味わって食べておけばよかった、大切に食べれば良かったと・・・
全てのものはいつか滅びます。もちろん、新しいいのちも生まれます。しかし、同じものなどありません。
だからこそ、今あるものを大切にしなくてはいけないのです。
このことを般若心経は「色不異空」という4文字で教えてくれているのです。
- 関連記事