般若心経に学ぶ その6 【度一切苦厄】

東光寺(静岡市清水区横砂)で開催されている子供坐禅会で話をしたときの原稿です。
昔、小学生の頃に富士山に登ろうとしたことがありました。
いつもは見るだけの富士山に登れると思うと、楽しみで仕方ありませんでした。
「富士山に登るなら、あれもいるかな!? これもいるかな!? きっとそれも必要だ!」
楽しく荷造りをしました。
本番当日、私はパンパンに膨らんだカバンを背負い、たくさんの服を着て、重たくて丈夫な靴を履いて富士山に登り始めました。
結果・・・
途中で体力を使い果たして登りきることができませんでした。
年下の子供も楽々頂上まで登れたのに、私は9合目あたりで動けなくなり、頂上はあきらめてみんなと一緒に下山をしました。
登り切れなかったことは悔しかったですが、それよりも衝撃だったのは帰宅後に見たテレビでした。
テレビで放送されていたのは「富士登山駅伝」でした。
ランニングシャツと軽そうなシューズを履いた選手がさっそうと頂上まで駆け上がっていくではありませんか!
彼らはもちろん、荷物など持っていません。
それでも、あっさりと頂上まで到達し、そして下山していくのです。
自分の安心安全、そして楽しみのために、たくさんの服を着て大量の荷物を背負って登山に失敗した私と正反対の姿がそこにあったのです。
もちろん、鍛え抜かれた肉体と万全のサポート体制があるから登山駅伝は開催されていたのですが、それでも衝撃的な光景だったことをよく覚えています。
般若心経というお経に
度一切苦厄 (どいっさいくやく)
という言葉があります。
全ての苦しみや災いから離れることの大切さを教えてくれる言葉です。
では、どうしたら全ての苦しみや災いから離れることができるのでしょうか?
それは、荷物を大量に持った私が富士登山に失敗し、何も持たない軽装な人達が富士山を駆け上った光景が答えを教えてくれています。
私がしっかりと肉体を鍛えて、不要な荷物を降ろしていれば登山は成功していました。
同じように、全ての苦しみや災いから離れるためには
自分自身が肉体を鍛えるように心を鍛えて、不要な心の荷物(正しいと思い込んでいることなど)を降ろせば良いのです。
心を鍛えるということは、心を調えることです。
様々な方法がありますが、その一つが、一緒にした坐禅です。
そして、「自分が正しい」という思い込みを捨てて、謙虚な気持ちで過ごすことが
度一切苦厄 (どいっさい くやく)
の実践です。
般若心経ではこのことを度一切苦厄と書いて
様々なこだわりを捨てることが出来れば 苦を乗り超えることが出来る
と教えてくれています。
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