昔話 「ねずみの嫁入り」に学ぶ その5 悪者がいない世界

最近見たドラマや映画、マンガや小説に悪役が出てこなかったものはありますか?
私は刑事もののドラマが好きなので、テレビで見ることはありますが、必ず悪役が出てきます。
・・・当たり前ですよね。
悪役がいなければ刑事ドラマは成り立ちません。
悪役が出てこない作品と言われて、何か思い出せますか?
そうですね、となりのトトロはそうかもしれません。
他にはありますか?
私はなかなか思い出すことができません。
なぜでしょうか。
それは正義の味方と悪者という2種類の人物を登場させて戦わせることが、一番分かりやすいからです。
皆さんは「ねずみの嫁入り」という昔話を知っていますか?
以前の記事で紹介をしていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
今回は5回目の最終回ですので、さすがに知っていると思いますので簡単に紹介をします。
「ねずみの嫁入り」は親ねずみが自慢の娘の結婚相手を探すが、結局は一番近くに幸せがあったことに気がつく物語です。
実はこの話しも「悪者」が出てこない話しです。
始めに声をかけられた太陽は雲をほめ、雲は風をほめ、風は壁を、壁はねずみをほめるのです。
第1回目にねずみの嫁入りが教えてくれるのは「一番近くに幸せがあった」と話しました。
そして、このことを仏教の言葉で紹介するとするならば、
白隠禅師坐禅和讃の「衆生本来仏なり」と紹介しました。
衆生とは生きとし生けるもの全てを表しますので、
「みんな仏さま、あなたも私も仏さま」
とも言いかえることができる言葉です。
さらに、
白隠禅師坐禅和讃をお唱えしている人は最後に衆生本来仏なりに似た言葉が出てくることに気がついているかもしれません。
白隠禅師坐禅和讃の最後は「この身即ち仏なり」と終わります。
寂滅現前するゆえに 当処即ち蓮華国 この身即ち仏なり
様々な欲望が消え、心が静まり、究極のやすらぎを得られた今 「ここ」こそが極楽であり、「この身」こそ仏様なのです
と終わるのです。
始めに、「みんな仏さま、あなたも私も仏さま」と言っておきながら、最後も「私達が仏さま」と言うのです。
とっても大切なことだからこそ、最初と最後に言ってくれているのです。
私は、この言葉と最初に出会ったとき
「なんて素晴らしい、救いのある言葉だ!」
と感じました。しかし、この言葉と向き合うたびに
「なんて難しい言葉だ!」
と感じるようになりました。
「あなたも私も仏さま」
大好きな人も、お世話になった人も仏さま
だったら納得できます。しかし、自分に都合の良いとだけが仏さまではありません。
嫌いな人も、嫌なことをする人も、悪人も仏さまだと言うのです。
どんな人の中にも仏さまのような尊い心があると感じる心こそが
私の中の仏さまの心なのです。
では、どうしたらこのような私の中の仏さまに出会えるのでしょうか。
それが「寂滅現前するゆえに」なのです。
様々な欲望が消え、心が静まり、究極のやすらぎを得られたら出会えるのです。
なんとも難しそうです。
しかし、その実践はすでに行っています。
それが、坐禅です。
さらに、坐禅だけではありません。
大切なことを「ねずみの嫁入り」が教えてくれています。
ねずみの嫁入りは悪者がいません、悪口も出てきません。
そうです、悪者を作らない、悪口を言わないことが大切だと教えてくれているのです。
簡単なことではありません。
自分の発言を24時間録音して文字に変換したらどうなるでしょうか。
驚くほど、たくさんの悪口を知らず知らずのうちに使っているかもしれません。
まずは、つい口から出てしまう言葉を飲み込んで見ることから、何か新しい発見があるのかもしれません。
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