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昔話シリーズ 猿蟹合戦 【6.昆布の登場】

600【昔話】52猿蟹合戦

昔話シリーズ 猿蟹合戦 【6.昆布の登場】



この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)で行われてみんなの坐禅会(子供坐禅会)で私が話した内容をまとめたものです。



皆さんご存じの通り、猿蟹合戦【さるかにがっせん】のお話は


1.猿が蟹の持っていたおにぎりを柿の種と交換
2.蟹は柿の種を植えて育てる
3.できた柿を猿が食べて青い柿で・・・
4.栗の登場
5.蜂の登場
6.昆布の登場
7.臼の登場
8.猿をこらしめ、猿を許す



となっています。


この猿蟹合戦の話から、私達は様々なことを学ぶことができます。

今回は 「6.昆布の登場」 という場面から何を学ぶことができるのかを紹介させていただきます。

※地域や物語によって差があり、昆布の代わりに馬の糞が登場するものも多くありますが、今回は昆布で話を進めさせていただきます。





「なんでだろう」で有名なテツandトモ というお笑いコンビが

「昆布が海の中でダシが出ないのなんでだろう〜」

と歌っています。




御存じの通り、出汁は細胞膜に囲まれているので海の中では出ていません。


細胞膜は乾燥したときに壊れてしまいます。


ですから、乾燥した昆布を水につけたり、ゆでたりすることで初めて出汁が出ます。





猿蟹合戦では猿に殺された蟹の子供達が悲しんでいると

泣いている子ガニに

「かにさん、かにさん、なぜ泣くの。」

と聞きくと、子ガニは

「猿が親を殺したから、かたきを討ちたい」

と言いました。すると

「にくい猿だ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣きでない。」

栗と蜂と昆布と臼とは、みんなよって、かたき討ちの相談をはじめました。


と、栗・蜂・昆布・臼が登場します。







「猿蟹合戦」という物語ですので、殺されてしまった蟹の仲間が復讐をしてもよいのですが、復讐をするのは蟹ではありません。


昔話の中には様々な想いが込められています。


と、言うことは「昆布」が登場したことにも意味があるはずです。




昆布の役割は、玄関付近で逃げ出そうとする猿を滑って転ばせることです。


滑らせるためにぬめりが必要です。


このぬめりが出汁です。


昆布は細胞膜を壊すことで、もともと持っていた体の中(細胞の中)にあった出汁を外に出します。


この場面で大切なことはここの部分です。


もともと持っているものを外に出すことができることを昆布が教えてくれているのです。






では、昆布が出汁を持っていたように、私達はもともと何を持っているのでしょうか。


御存じの通り、私達は何も持たずに生まれてきます。

お金や食べ物を握って生まれてはきません。

服だって着ていません。

ですが、大切なものを胸にしまって生まれてきます。

それが、仏の心とも言われる素晴らしい心です。

誰かを思いやる心、誰かを大切にする心、一生懸命がんばる心





そういった素晴らしい心を持って生まれてきます。


では、昆布は細胞膜が壊れ煮ることで出汁が外に出てきますが、私達が持っている素晴らしい心はどうしたら外に出せるのでしょうか。


それは、難しいことではありません。

死んだ後に出てくるものでもありません。



姿勢を良くして、ゆっくり呼吸をすることで、心が静かになっていきます。


自分の心が静かになったと感じた時に表に出ているのが、生まれたときから持っている素晴らしい心です。


坐禅をしたときだけでなく、昆布を見たり、出汁を感じた時、さらに猿蟹合戦に昆布が登場したときに「自分の中にも素晴らしい心がある」ということを思い出してみてください。





600仏教豆知識シール 400-407 昔話シリーズ 猿蟹合戦6
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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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