昔話シリーズ 桃太郎 【10:鬼を退治して帰ってくる】

昔話シリーズ 桃太郎 【10:鬼を退治して帰ってくる】
この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)で行われてみんなの坐禅会(子供坐禅会)で私が話した内容をまとめたものです。
皆さんご存じの通り、桃太郎のお話は
1.川に桃が流れてくる
2.おばあさんが桃に「あっちの水は辛いよ、こっちの水は甘いよ」と言う
3.桃から桃太郎が生まれる
4.おじいさんとおばあさんが桃太郎のめんどうをみる
5.桃太郎、鬼ヶ島へ
6.おじいさん、おばあさんがきびだんごを作る
7.きびだんごを欲しがる猿、犬、きじを仲間にする
8.船で鬼ヶ島へ出発
9.鬼ヶ島到着
10.鬼を退治して帰ってくる
となっています。
この桃太郎の話から、私達は様々なことを学ぶことができます。
今回は 「10.鬼を退治して帰ってくる」 という場面から何を学ぶことができるのかを紹介させていただきます。
とうとう、鬼を退治した桃太郎はおじいさんとおばあさんの所へと帰ってきます。
その手には鬼から受け取ったたくさんの宝物がありました。
ところが、おばあさんは桃太郎が帰ってきたことに気がつくと宝物のことよりも
「まあ、けががなくって何よりさ。」
と言って桃太郎達を迎えます。
宝物よりも大切な人がいることが伝わる言葉です。
この場面は、一番大切な宝は「無事」の心であることを示しているように感じます。
私達は普段の生活の中で危険や不幸なことが起こらない状態のことを「無事」と言います。
それに対して仏教では「無事」は「こだわりのない生き方」を意味しています。
「こだわりがない」ということは
・かっこよく見られたい
・認めてもらいたい
・がんばったことを褒めてもらいたい
など、見返りを求めない姿とも言えます。
私達は普段から、洋服を着るように多くの「欲」を身に付けています。
この「欲」を捨てた人の姿こそが、宝物を持って帰ったことよりも桃太郎自身が帰ってきたことを喜ぶおばあさんの姿なのです。
「無心」の心で桃を拾ったおばあさんの姿から始まった桃太郎の物語は、おばあさんが「無事」の姿を見せて締めくくられます。
桃太郎の物語は、おばあさんや桃太郎が「すごい人」ということを伝えるだけでなく、物語を読んでいる私達自身が「無」になることの大切さを教えてくれています。
「無」になるとは、いなくなったり消えたりすることではありません。
静かに姿勢良く坐って、ゆっくりと呼吸をすることで心が調うことです。
さぁ、ゆったりと坐っていきましょう!

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