オンライン坐禅会 法話原稿 【降る雨は同じ】

ノーベル賞を創設したノーベルは
科学技術の進歩は常に 危険と背中合わせだ。
それを乗り越えてはじめて 人類の未来に貢献できる
という言葉を残しています。
彼は扱いが難しかったニトログリセリンを安全に持ち運べるダイナマイトを発明し巨万の富を得ました。
しかし、ダイナマイトは工事など人類の為に使われるだけでなく、爆弾などにも使用され多くの命を奪ったのです。
同じものでも使い方を間違えれば、多大な影響があることを実感したからこそ、巨万の富をノーベル賞創設の為に使ったのです。
私が中学校の教員になったとき、体罰についての研修がありました。
そこで、
「正座をさせてはいけない。どんなに短い時間でも体罰になります。」
と教わりました。
数日後に参加した部活動に関する講習会では
「最近の子供達は足首のケガが多い。椅子中心の生活になり足首が固くなっているからです。和式のトイレを上手に使えない子供が増えているのも足首の固さが原因です。」
と言われて、
ふ~ん なるほど・・・
と聞いていると、驚きの言葉が聞こえてきました。
「だから、正座をさせてください。無理のない正座はとても良いストレッチになりますよ!」
数日前に「正座は体罰」と教えられたばかりだったので驚きました!
同じ正座が、一方から見れば体罰、一方から見ればストレッチになるのです。
仏教聖典に
仏の大悲は平等であるが、人びとの性質の異なるのに応じてその救いの手段には相違がある。
ちょうど、降る雨は同じであっても、受ける草木によって、異なった恵みを得るようなものである
という言葉があります。
ダイナマイトを人類発展のための道具として使うのか、人殺しの道具として使うのか、決めるのは私達自身です。
正座を体罰と感じえるか、ストレッチだと感じるかも、正座をしている本人が感じることです。
同じ雨でも受け取り方ひとつで、結果は大きく変わります。
受け取り方を変えることができるのは、雨を降らしている人ではありません。
雨を受け取っている人です。
人々の苦を救う仏の大きな慈悲(大悲)は平等に、今この瞬間も降り注いでいます。
雨も霧雨から暴風雨まで様々な形があるように、大悲にも様々な形があります。
一見すると嫌だと感じる出来事も、うれしいと踊りだしたくなる出来事も、全ては平等に降り注ぐ大悲なのです。
大悲が平等に降り注いでいることに気がつき、正しく受け止めることができるのは、身体を調え・呼吸を調えることで心が調った状態にある、先ほどまで坐禅をしていた皆様自身です。
ぜひ、これからも坐禅を習慣にしていただき、心を調えて自分自身に降り注いでいる大悲を実感してまいりましょう!
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