fc2ブログ

オンライン坐禅会 法話原稿 【墓場から呼ぶ声】

私は幼少期をお寺で過ごしました。


よく、友達に


「お寺に住んでるとお墓でお化けを見るでしょ!?」


とよく言われました。




もちろん、見たことなどありません。


マンガやテレビに出てくる


「ヒュ~ ドロドロ~」


みたいな音も聞いたことはありません。


ですから、私にとってお墓は「怖い場所」ではありませんでした。


しかし、幼少期に夜遅くに墓場から私を呼ぶ声が聞こえたら怖くて近づけないかもしれません・・・






600仏教聖典 勇気ある男


仏教聖典に次のような話が残されています。



ある男が墓場の近くに住んでいました。


ある夜、墓場の中から、自分を呼ぶ声が聞こえたのですが怖くて行くことができませんでした。


そのことを友人に話すと、で勇気ある友人が、その声をたよりに墓場に入り、声の出る場所をたずねて、


「お前は誰だ?」


と聞くと、地の中から声がして、


 「私は、地の中に隠されている宝である。お前は勇気があるから私を取るにふさわしい。あすの朝、 私は七人の僧侶とともにおまえの家に行くであろう。 」


と言ったのです。


 その男は


 「私の家へ来るなら待っているが、 どのようにもてなしたらよいのか。」


と聞くと、宝は答えます。


「体を清め、部屋を清めて、水を用意し、八つの器にかゆを盛って待つがよい。食事が終わったら、ひとりひとりを部屋の中に入れれば、黄金のつぼになるだろう。」


 次の日、男は体を清め、家を清めて待っていると、八人の僧侶がやって来ました。部屋に通して、水とかゆとを供養し、終わってからひとりひとりを部屋に導くと、全員が黄金のいっぱい入ったつぼに変わってしまったのです。



 このことを聞いた欲深い男が、 自分も黄金のつぼが欲しいと思い、 同じように部屋を清めて八人の僧侶を招いて供養し、 食事の後、 部屋に閉じこめました。しかし八人の僧侶は金のつぼになるどころではなく、 怒って暴れ出し、 その男はついに訴えられ、 捕らえられてしまいます。


 はじめに名を呼ばれておびえていた臆病な男も、呼んだ声が黄金のつぼであると知ると、これも欲を起こし、あの声はもともと自分を呼んだのだから、あのつぼは自分のものだと言いはり、その家へ入ってつぼを取ろうとすると、つぼの中には蛇がいっぱいになって何も取ることはできなかったのです。




 その国の王はこれを聞いて、黄金のつぼは、この勇気のある男のものであるとして、


「世の中のことは何ごともこのとおりであって、愚かな者はただその果報だけを望むが、それはそれだけで得られるものではない。ちょうどそれは、うわべだけ戒を保っていても、心の中にまことの信心がなければ決して真の安らぎは得られないのと同じである。」

と言われたのです。






宝を得ようとする3人の男は、現代を生きる私達の姿を表しているように感じます。


”坐禅会”を例にすることもできます。



「臆病な男」は坐禅会の存在を知っているが参加したことがない人。

「勇気ある男」は坐禅会の存在を知って、実際に参加した人。

「欲深い男」は坐禅会に参加せず、参加したことがある人の話を聞いて、あたかも坐禅をしたかのように思い込む人です。



御存じの通り、坐禅は実践が何よりも大切です。


臆病な男が後から宝だけを得ようとして、蛇ににらまれるように、坐禅会の存在を知っているだけで参加しない人は宝を得ることはできません。


また、坐禅をしたことがない人が、話だけ聞いて何かを語っても、欲張りの男が閉じ込めた僧侶に訴えられたように、だれもうわべだけの語りには耳を傾けません。


やはり坐禅会の存在を知って興味を持ったのならば、実践をする以外に道はありません。



もちろん、オンライン坐禅会に参加くださった皆様は仏教聖典の話に出てくる“勇気ある男”です。


ぜひ、これからも”ただその果報だけを望む“のではなく、実践を大切にしていただき、一緒に坐禅を続けてくださることを願っています。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる