深呼吸をして落ち着く人は 普段から深呼吸をしている人
以前、中学校の教員として部活動の指導をしているときに尊敬する大先輩の先生に言われた言葉を忘れることができません。
「深呼吸をして落ち着く人は 普段から深呼吸をしている人だけだ」
と言われたのです。
教えてくれた方は、私とは違う競技を専門とされる方で、その競技の世界ではこの先生のことを知らない専門家はいないと言われる程有名な方でした。過去に全日本の学生選抜の監督をされた経験もある方でした。
その方が試合中に生徒にアドバイスをするときに覚えておいた方が良いことを教えてくれました。
競技は違えど、共通するとても大切なことを教えていただきました。
「試合中に緊張して本来の力を出せていない人に、”落ち着け”と言っても絶対に落ち着かない。言われて出来るなら最初からやっている。”深呼吸をしろ”と言えば深呼吸をするかもしれないが、深呼吸をして落ち着く人は 普段から深呼吸をしている人だけだ。」
ということを教えてもらいました。
その後、私も生徒にアドバイスをすることがありましたが、「深呼吸をして落ち着く人は 普段から深呼吸をしている人」というのはその通りだと感じる場面は多々ありました。
仏教の教えを、現代の言葉で説いた仏教聖典の中に従業員が店長を怒らせる話があります。

お金持ちの女主人は謙虚で親切だと評判であった。
その評判が本物か試すために使用人がわざと失礼なことをしたところ、女主人は怒り、使用人を棒で打った。
そのことが周囲の人に知れ渡り女主人の評判は大きく下がってしまった。
というお話です。
どんなときでも 静かな心と 良い行いを心がけることの大切さを説く話です。
仏教聖典には、この話の中で
環境がすべて心にかなうときだけ、静かな心を持ちよい行いをしても、それはまことによい人とはいえない。
仏の教えを喜び、教えに身も心も練り上げた人こそ、静かにして、謙遜な、よい人といえるのである。
と説きます。そして、そのためには
心が濁れば行いが汚れ、行いが汚れると、苦しみを避けることができない。だから、心を清め、行いを慎むことが道のかなめである。
とも説いています。
つまり、普段から心を清め、行いを慎むことが大切なのです。
落ち着こうと思って、普段やっていない深呼吸をしたところで落ち着くことができないように、普段から心を調えようとしていなければ、少しの挑発や環境の変化によって心が乱れてしまうのです。
では、普段からの心を調えるためにはどうしたら良いのでしょうか。
それこそ、深呼吸です。
ゆったりと呼吸をすることで心が調うことは多くの方が実体験をしたり科学的にも実証されています。
御存じのように坐禅も呼吸を大切にしています。
お経をお唱えするときにも呼吸が調います。
私たちが先人から受け継いだ尊い習慣の中には、今を生きる私達を支えてくれる習慣が数多くあります。
これらも尊い習慣を大切にすることで、いざというときに行う深呼吸が意味あるものにしていきたいと思っています。
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