雪解けの水が力強く流れる川に感じたこと 【涅槃図】
2月15日には多くのお寺で涅槃会というお釈迦様の亡くなられた日に行われる法要が営まれます。
涅槃会の際にはお釈迦様が亡くなられた際の様子を描いた涅槃図がかけられることが多くあります。

この涅槃図には様々なものが描かれており、その一つ一つに物語があるのです。

涅槃図の上部を見ると満月、お釈迦様のお母様、8本の木(4本は枯れ、4本は緑が生い茂っている)、美しい袋などが描かれ

中央部分には亡くなられたお釈迦様、その周囲で嘆き悲しむお弟子様達が描かれ、

また下部には、お釈迦様の死を悲しむ多くの動物たちが描かれています。
全ての物語を紹介したいと思うのですが、それをするにはあまりに時間がありませんので、今回は涅槃図に必ず描かれる風景を紹介させていただきます。
涅槃図の上部に必ず描かれる風景があります。

それが「河」です。
私自身、河が描かれていると知るまでに何度も涅槃図を見てきましたが、河が描かれていることに気が付くことはありませんでした・・・
しかし、よく見ると確かに大地と空の間、と言うよりも大地と沙羅双樹の木の葉の間に、水の流れが描かれているのです。
お釈迦様は跋提河【ばつだいが】と言われる大きな河の近くで亡くなられたと言われており、涅槃図には必ずこの河が描かれているのです。
では、これはただ河の近くでなくなったらから描かれているのでしょうか。
もちろん違います。
涅槃図をお参りし、涅槃図に描かれている河を目にしたとき、
お釈迦様が河の近くで亡くなることによって、人の命は水の流れのように、少しもとどまることなく流れていくことを示す
という深い意味を感じなくてはいけません。
少し話が変わりますが、数年前に新潟を旅した時に感じた出来事がありました。
4月の終わりに新潟を車で旅行したのですが、春の雪国への旅はそのときが初めてでした。
これまで、静岡・神奈川・愛知そして静岡と様々な地域を転々として様々な景色を見てきましたが、春の雪国を車で走っていると「何かが違う」と感じていました。

そして、窓を少し開けて走っているときに近くを流れる川の音を聞いて「何か」に気が付くことができました。
川の水が違ったのです。
静岡、神奈川、愛知は共通して冬の降水量が少ない傾向にあります。
特に今住んでいる静岡は大変温暖な気候で、冬から春にかけては川の水が無くなってしまう「瀬切れ:せぎれ」がニュースになるほど降水量が少ないのです。
ですから、私の中で春の川というと「石だらけで水があまり流れていない」という印象しかありませんでした。
しかし、雪国の春の川は全く違いました。どの川も雪解け水がたっぷりと力強く流れていたのです。
この力強く流れる川の水を見たときに私は
白隠禅師 坐禅和讃の
衆生本来仏なり
水と氷の如くにて
水を離れて氷なく
衆生の外に仏なし
という言葉を実感したような気持になりました。
衆生本来仏なり
生きとし生けるものすべてが仏様なのだ
水と氷の如くにて
しかし、水のようにさらさらと流れる尊い心も、氷のように凝り固まって自分自身を苦しめることがある
水を離れて氷なく
水が固まると氷になり、氷が溶けると水になるように、水と氷は切っても切れない関係です。
衆生の外に仏なし
同じように今を生きる私たちの外に仏などいないのです。
という教えです。
冬に積もった雪もやがては溶けて水となり力強く流れている姿が、悩み、苦しみという凝り固まった心が溶けて力強く生きていく多くの人たちの姿と重なりました。
昭和の禅僧 山田無文老師は著書の中で
お釈迦様が亡くなられても法が残る。
法は“サンズイ”に“去る”、水が流れると書く。
流れる水は凍らんと申します。
流れる水は腐らん。
と示されています。
涅槃図に描かれた河・跋提河【ばつだいが】は、
人の命は水の流れのように、少しもとどまることなく流れていくことを伝えくれています。
氷が溶けて水になり、その水が氷ることも腐ることもなく流れることの大切さを示してくれています。
冬に多くの雪が降る地方では、雪解けの水によって春の川が力強く流れるように、私たちも悩み苦しんだとき大きな氷を手にすることになります。
悩めば悩むほど、苦しめば苦しむだけ氷は大きくなっていきます。
しかし、その大きな氷が溶けだし力強く流れ始めれば瀬切れすることなく流れ続けるのです。
この氷を溶かす方法の1つが坐禅です。
ふーっと息を吐き切れば体の中から暖かくなるように、少しずつかもしれませんが、心の氷が溶けていきます。
皆様も涅槃図をこれから目にすることがあるかと思います。
そんな時には、注意深く見ないと気が付けないかもしれませんが涅槃図に描かれた河を見つめ、そして心を調えるために姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えてみてはいかがでしょうか。
涅槃会の際にはお釈迦様が亡くなられた際の様子を描いた涅槃図がかけられることが多くあります。

この涅槃図には様々なものが描かれており、その一つ一つに物語があるのです。

涅槃図の上部を見ると満月、お釈迦様のお母様、8本の木(4本は枯れ、4本は緑が生い茂っている)、美しい袋などが描かれ

中央部分には亡くなられたお釈迦様、その周囲で嘆き悲しむお弟子様達が描かれ、

また下部には、お釈迦様の死を悲しむ多くの動物たちが描かれています。
全ての物語を紹介したいと思うのですが、それをするにはあまりに時間がありませんので、今回は涅槃図に必ず描かれる風景を紹介させていただきます。
涅槃図の上部に必ず描かれる風景があります。

それが「河」です。
私自身、河が描かれていると知るまでに何度も涅槃図を見てきましたが、河が描かれていることに気が付くことはありませんでした・・・
しかし、よく見ると確かに大地と空の間、と言うよりも大地と沙羅双樹の木の葉の間に、水の流れが描かれているのです。
お釈迦様は跋提河【ばつだいが】と言われる大きな河の近くで亡くなられたと言われており、涅槃図には必ずこの河が描かれているのです。
では、これはただ河の近くでなくなったらから描かれているのでしょうか。
もちろん違います。
涅槃図をお参りし、涅槃図に描かれている河を目にしたとき、
お釈迦様が河の近くで亡くなることによって、人の命は水の流れのように、少しもとどまることなく流れていくことを示す
という深い意味を感じなくてはいけません。
少し話が変わりますが、数年前に新潟を旅した時に感じた出来事がありました。
4月の終わりに新潟を車で旅行したのですが、春の雪国への旅はそのときが初めてでした。
これまで、静岡・神奈川・愛知そして静岡と様々な地域を転々として様々な景色を見てきましたが、春の雪国を車で走っていると「何かが違う」と感じていました。

そして、窓を少し開けて走っているときに近くを流れる川の音を聞いて「何か」に気が付くことができました。
川の水が違ったのです。
静岡、神奈川、愛知は共通して冬の降水量が少ない傾向にあります。
特に今住んでいる静岡は大変温暖な気候で、冬から春にかけては川の水が無くなってしまう「瀬切れ:せぎれ」がニュースになるほど降水量が少ないのです。
ですから、私の中で春の川というと「石だらけで水があまり流れていない」という印象しかありませんでした。
しかし、雪国の春の川は全く違いました。どの川も雪解け水がたっぷりと力強く流れていたのです。
この力強く流れる川の水を見たときに私は
白隠禅師 坐禅和讃の
衆生本来仏なり
水と氷の如くにて
水を離れて氷なく
衆生の外に仏なし
という言葉を実感したような気持になりました。
衆生本来仏なり
生きとし生けるものすべてが仏様なのだ
水と氷の如くにて
しかし、水のようにさらさらと流れる尊い心も、氷のように凝り固まって自分自身を苦しめることがある
水を離れて氷なく
水が固まると氷になり、氷が溶けると水になるように、水と氷は切っても切れない関係です。
衆生の外に仏なし
同じように今を生きる私たちの外に仏などいないのです。
という教えです。
冬に積もった雪もやがては溶けて水となり力強く流れている姿が、悩み、苦しみという凝り固まった心が溶けて力強く生きていく多くの人たちの姿と重なりました。
昭和の禅僧 山田無文老師は著書の中で
お釈迦様が亡くなられても法が残る。
法は“サンズイ”に“去る”、水が流れると書く。
流れる水は凍らんと申します。
流れる水は腐らん。
と示されています。
涅槃図に描かれた河・跋提河【ばつだいが】は、
人の命は水の流れのように、少しもとどまることなく流れていくことを伝えくれています。
氷が溶けて水になり、その水が氷ることも腐ることもなく流れることの大切さを示してくれています。
冬に多くの雪が降る地方では、雪解けの水によって春の川が力強く流れるように、私たちも悩み苦しんだとき大きな氷を手にすることになります。
悩めば悩むほど、苦しめば苦しむだけ氷は大きくなっていきます。
しかし、その大きな氷が溶けだし力強く流れ始めれば瀬切れすることなく流れ続けるのです。
この氷を溶かす方法の1つが坐禅です。
ふーっと息を吐き切れば体の中から暖かくなるように、少しずつかもしれませんが、心の氷が溶けていきます。
皆様も涅槃図をこれから目にすることがあるかと思います。
そんな時には、注意深く見ないと気が付けないかもしれませんが涅槃図に描かれた河を見つめ、そして心を調えるために姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えてみてはいかがでしょうか。
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