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昔話シリーズ その10 キツネが笑う

この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)で行われてみんなの坐禅会(子供坐禅会)で私が話した内容をまとめたものです。



600【昔話】10



昔話シリーズ【10】 キツネが笑う



調べてみると、今回紹介をする「キツネが笑う」とよく似た話しは複数ありました。


しかし、今回は我が家にあった娘の誕生祝に当時の同僚にもらった本に掲載されていた「キツネが笑う」を紹介させていただきます。





話しは以下の通りです。

ある日、居酒屋さんにお酒を飲みたいと思ったキツネが武士に化けてやってきます。

「おーい、酒だ!」

武士に化けたキツネが言ったので店の主人が見ると、武士なのに尻尾があったり、キツネの耳が見えていたりとお粗末な化け方です。

そこで主人は桶に水を入れて武士の座っている机の上に置きました。

武士に化けたキツネは桶の中を見て驚きます。

うまく化けたはずなのに耳が出ていて自分がキツネだとバレバレです。

キツネは慌てて店を飛び出して山へ帰っていきました。


翌日、店の主人が山を歩いている

「昨日は面白かったね、ウフフ、ウフフ」

と、キツネの笑い声が聞こえてきました。





という話しです。


私はこの話を聞いたときに、主人が何も言わずに水の入った桶を差し出す場面が印象に残りました。


仏教では私達の心を水面に例えることがよくあります。


嫌なことうや辛いことがあって心が乱れている状態を揺れる水面に例え、


坐禅をしたりお参りをしたり、お経を唱えたりすることで心が落ち着いた状態になることを、波のない水面に例えます。



主人が置いた桶の水も、置いた直後は波があったことでしょう。しかし、その波が無くなって水面が調ったとき、キツネの今の姿が映し出されたのです。キツネはその姿に驚きました。


これは、坐禅などをして自分の心が調うことで、自分自身の姿を見ることができたときの様子を表してくれているように感じます。



また、仏教の世界では、坐禅などふとしたことがきっかけで悟りを得た(大切なことに気がつく)という話しがよく出てきます。その中には悟ったときに「声をあげて笑った」という逸話も残っています。


桶の中の水面が調うことで、自分自身の姿を見て、面白かったと笑うキツネの姿は



坐禅などの修行をすることで心が調い、自分自身の本来の姿を見て、思わず声をあげて笑う禅僧の姿を表現しているようにも感じます。



キツネが桶の水面を見て本当の自分の姿が映っていることに気が付いたのと同じように、私達も心を波のない水面のように調えることで本当の自分が見つめていきたいものです。


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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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