絵葉書法話 40 【涅槃】

煩悩(ぼんのう)の火が吹き消された状態の安らぎの境地
あれもしたい、これもしたいと欲張ると、この上ない苦しみを味わうことになる。
だからこそ、欲張る気持ちを捨てなくてはならない。
私達には それができる
涅槃【ねはん】
一般的にも良く使われる言葉に涅槃【ねはん】という言葉があります。
涅槃と聞くと 「死」や「お釈迦様の死」を連想される方が多いと思います。
私も以前はそのように思っていました。
しかし涅槃は
煩悩(ぼんのう)の火が吹き消された状態の安らぎの境地
を意味する言葉です。
真っ暗な部屋に一本だけあるロウソクを吹き消すと当然部屋は真っ暗になります。
部屋が真っ暗になれば怖いものです。
そう考えると涅槃はやはり、死という暗闇を表す言葉なのでしょうか。
もちろん、涅槃は決して恐怖や暗闇を表す言葉ではありません。
以前、子育て中の女性に
「この子は部屋を暗くすると怖いと言って寝れないくせに、こないだの誕生日の時にはロウソクの火を大喜びで吹き消して部屋を暗くしちゃったんですよ!」
と話してくれました。
なぜ、怖くないのか子供に聞くと、“ロウソクを消した後、誰かが電気をつけ、みんなが笑顔で迎えてくれるから”といった意味の言葉を返してくれました。
火を消した後、幸せで安らぎの世界があることを知っているからこそロウソクを消すことができるのです。
しかし、私達はいつのまに火を消した先の暗闇にしか目が行かなくなっているのではないでしょうか。そのために、欲望の火を消すことに 言い知れぬ怖さを感じてしまっているのです。
煩悩という火を消してもそこに広がるのは暗闇ではありません。
子供がロウソクの火を消した先に母親の笑顔があったように煩悩を消すことで、自分自身を支えてくれている周囲の存在を実感しすることができます
。
法句経の203に
飢えは上なきの病(やまい)
この身には
最上のくるしみあり
このことわりを
あるがままに知らば
そこに
こよなきたのしみ
涅槃あるべし
と、あります。
私はこの句が、煩悩を消し去ることができず、飢えた状態になれば大きな苦しみに襲われます。
しかし、子供が喜んでロウソクを吹き消したように私達も煩悩の火を恐れることなく消すことができることを説いてくれているように感じます。
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