絵葉書法話 47 【苦しいときに 道は開ける】

苦しいときに 道は開ける
胎児は羊水に包まれた状態でへその緒から酸素を受け取っているが、誕生した瞬間 劇的な変化により肺呼吸を始める。この苦しみを味わうからこそ空気中の酸素をいただき広い世界を感じることができる。
絵葉書の写真は水族館で撮影したものであり、よく見ると空気の泡が下から上へと移動している様子が写っています。
この気泡はやがて見えなくなります。
見えなくはなりますが「消えてなくなる」わけではありません。
水面に達して外の空気と一体になったり、水の中に溶け込んだりします。
仏教では「苦しみ」を水面に浮かぶ泡に例えることがあります。
泡がやがて消えてなくなるように苦しみも やがては 消えてなくなると説くのです。
消えてなくなる泡は なんの役にもたたないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。水中に溶けた酸素はエラを通じて魚を助け、外の空気と一体になった泡は多くの生命を生かしていきます。
何一つ無駄なことはないのです。
苦しみも同じではないでしょうか。
泡が水中や外の空気と一体になるのと同様に、苦しみもやがては自分自身と一体となり自分や周囲を活かす糧になるのです。
般若心経【はんにゃしんぎょう】というお経の後半部分に能除一切苦【のうじょいっさいく】という部分があります。
これは「全ての苦るしみから解放される」ことを意味しています。
この一語は般若波羅蜜多の智慧によって、全てのものが空であることを知れば、全ての苦るしみから解放されることを示してくださっています。
苦しみもやがては自分自身と一体となり自分や周囲を活かす糧になることこそが、全ての苦るしみから解放される姿なのかもしれません。

真実不虚【しんじつふこ】
能除一切苦【のうじょいっさいく】
般若波羅蜜多の智慧によって、全てのものが空であることを知れば、全ての苦るしみから解放される。
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