お坊さんになる“きっかけ” 【尊敬する僧侶との出会い編 その3】

中学校の教員になって2年目に僧侶であった祖父が亡くなりました。
祖父は戦後中学校の教員として務めながらお寺を守ってきた人でした。
当時の私は大学院を卒業し教員として就職をしたいわゆる“一般人”でした。
学生時代、教員時代ともにお寺から離れて生活をしていましたのでお寺の習慣やしきたりも知らない状態でした。
そこに、祖父が亡くなったとの連絡。
驚きましたが慌てて育ったお寺へと向かいました。
お寺に着くと住職を務めた祖父が亡くなったということで近隣のお寺の和尚様方も大勢弔問に来て下さっていました。
そして“一般人”の私にはわからない専門用語が飛び交いながら葬儀の日程や内容が決まっていきました。
そして数日後、火葬場にて祖父は荼毘にふされました。
火葬場では1時間30分程の待ち時間があります。
広い部屋で待機をしていると久しぶりに会う親戚や地元の方が話しかけてきます。
「今、仕事は何かしているのか?」
と聞かれ
「中学校の教員をしています。」
と答えます。すると相手は
「へぇ、すごいね、がんばりな!」 又は 「教科は何?」
と返します。
そんなやりとりを数回していると、今まで話したことのない和尚様に声をかけられました。
「お孫さんだよね、今何をしているの?」
と聞かれたので、定型文のごとく
「中学校の教員をしています。」
と答えました。すると、これまでと違う言葉が投げかけられました。
「修行道場はどこへ行かれたのですか?」
私は、修行道場へは行かず就職をしていたので
「行っていません。卒業後、すぐに就職をしました。」
と答えました。その瞬間、かなり大きな声で
「そんなことじゃいかん!! あなたはすぐにでも修行に行かなければいけないんだ!! こんな所で何をしているんだ!!」
と叱られました。
こんなに真正面から叱れたのはいつ以来だろうかと思い出せないくらい怒鳴られたのです。
何と返事をしたら良いのか、どういう行動をしたらいいのか分からず立ち尽くしたことだけは良く覚えています。
しかし、時間が経つにつれてこの和尚様の言葉の意味が分かるようになってきました。
この和尚様は初対面の大人に対してまっすぐにぶつかってきてくださったのです。
それだけでなく、知らず知らずのうちに高くなってしまっていた私の鼻をへし折ることで、仏の道へと誘導してくださったようにも感じます。
この和尚様は火葬場という大人しくするべき場所で、周囲の眼など気にせず、修行に行くべきだと説いたのです。
この姿を見たとき、相手のことを想いながらも厳しく接することで大切な教えを説こうと思える仏様の教えとは何なのか、その教えに触れてみたいと感じたことを今でも覚えています。
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