葬儀・葬式シリーズ 【8】 引導法語【いんどうほうご】
この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)で行われて子供坐禅会で私が話した内容をまとめたものです。
葬儀・葬式シリーズ 【8】 引導法語【いんどうほうご】

「引導【いんどう】を渡す」はお寺の言葉
最近はあまり聞かないかもしれませんが、大人が
「引導を渡す」 「引導を渡された」
などと言っていることを聞いたことはありませんか。
聞いたことがない人も、これから聞くことがあるかもしれません。
そのときは、「あ、引導って仏教の言葉だったな!良い言葉だったな!」と思い出してください。
引導法語【いんどうほうご】の今と昔
最近、「引導を渡す」・「引導を渡された」と使う時は「引退をさせる」・「引退をさせられる」と言った意味で使っています。
スポーツ界では「あの人は、そろそろ体力も落ちてきているし、限界だよね。引導を渡しましょう」と言った具合に使われています。
スポーツニュースでも「若い選手に負けて引導を渡されました。」など言っているのを聞いたことがある人もいるかもしれません。
あまり、引導を渡した方も渡された方も良い気持ちになっているようには感じにくい使い方です。
しかし、本当の「引導」の意味は違います。
引導はもともと仏教の言葉で、人びとを仏の道に入らせるために導くことを意味しています。
仏の道に入らせることは、人を助けることになりますので、引導とは亡くなった方を成仏させ、助けるという意味もある言葉です。
そして、現在のお葬式では
亡くなられた方の素晴らしさをたたえ、亡くなった方の死を悲しむ心を漢詩にしてお唱えすることで、亡くなられた方を仏さまの世界に導くことを引導法語と言うようになりました。
引導法語の流れ
お葬式に出たことがある人の中には和尚さんが
1.炬火【たいまつ】のようなものを持って円を空中に書く。
2.普段使っているより少し難しい言葉で亡くなった方のことを話す。
3.かーーーーつ!! と大きな声で叫ぶ
としている所を見たことはありませんか。
これが、現代のお葬式で行われている引導法語です。
グルっと円を描く炬火【たいまつ】
2番の難しい言葉で語っているのは、亡くなった方の一生、そしてその人の良さなどを讃える詩になっています。
そして、1番の炬火【たいまつ】のようなものを持って円を空中に描いているのは、昔の和尚様(黄檗希運禅師【おうばくきうん ぜんじ】)が、大切な母親を亡くされたときの話しに由来しています。
この和尚様、大変厳しい修行をされていました。修行中は家族である母親とも連絡を取らないようにしていました。修行が終わるまでに母親と会ってしまったら甘える心が出てしまうことを心配したのです。
しかし、修行の途中に母親が溺れていると知ったのです。和尚様は一生懸命探しますがとうとう母親を見つけることができませんでした。和尚様は探すために使っていた炬火【たいまつ】で円を描き母親が溺れた場所に投げ込み、母親のための詩をお唱えしたのです。
本当に大切な方のことを想っての行動だったのです。
ですから、その後、大切な方が亡くなった時には、炬火【たいまつ】で円を描き、詩をお唱えするようになったのです。
お葬式のときに炬火【たいまつ】のようなものを持って円を空中に書く和尚さんを見たときには、
これから亡くなった方の為の詩がお唱えされるんだと考えて、少し難しい言葉が出てきますが一生懸命和尚さんの言葉を聞いてみてください。
今回は
お葬式では、本当に大切な方のことを想って炬火【たいまつ】のようなものを持って空中に円を描く
と覚えてもらえればうれしいです。
- 関連記事
-
- 葬儀・葬式シリーズ 【10】 山頭念誦【さんとうねんじゅ】 (2019/04/14)
- 葬儀・葬式シリーズ 【9】 引導法語【いんどうほうご】 その2 (2019/04/13)
- 葬儀・葬式シリーズ 【8】 引導法語【いんどうほうご】 (2019/04/12)
- 葬儀・葬式シリーズ 【7】 鎖龕・起龕【さがん・きがん】 (2019/04/11)
- 葬儀・葬式シリーズ 【6】 龕前念誦【がんぜんねんじゅ】 (2019/04/10)