葬儀・葬式シリーズ 【6】 龕前念誦【がんぜんねんじゅ】
この記事は東光寺(静岡市清水区横砂)で行われて子供坐禅会で私が話した内容をまとめたものです。

葬儀・葬式シリーズ 【6】 龕前念誦【がんぜんねんじゅ】
雷【かみなり】が光っている時間は短い
雷を見たことはありますか。
雷が光っているのは短い時間です。
でも、近くで光った雷を見ると本当にまぶしいですよね。
あまりのまぶしさに、光が消えてからも目がチカチカします。
そして、時間がたってから目をつぶるとぼんやりと光が残っているように感じます。
写真を撮るときのフラッシュもそうですね。
パッシャ!と光ると、しばらく目の中に光が残っているように感じます。
龕前念誦【がんぜんねんじゅ】
お葬式のときに、いろいろな種類のお経をお唱えします。
その中に龕前念誦というものがあります。
龕【がん】は普段なかなか見ない文字です。
龕【がん】とは、棺桶【かんおけ】のことです。
もともとは土や石の壁に、仏像・仏具を納めるために掘ったくぼみ(穴)を龕【がん】と言っていました。
くぼみに仏様を納めている姿と、棺桶に亡くなった方を納める姿が重なって見えたので、龕【がん】の前でお経を唱える龕前念誦【がんぜんねんじゅ】と言うようになったと私は思っています。
さて、この龕前念誦【がんぜんねんじゅ】などのお経は決しておまじないや呪文ではありません。
昔から使っている言葉なので少し分かりづらいですが、よ~く聞くと意味が分かる言葉です。
内容はもちろん、亡くなった方が成仏に安らかに旅立たれることを祈る言葉です。
この言葉の中に、
この世に人が生まれてくることは
雷が大空に激しく鳴り響くように瞬間的であり
この世を去ってしまえば波静かな大海のように消えて行きます。
とあります。
私達が“生きている”期間は本当に短い。
雷が光る時間くらい アッと言う間だ。
そのように教えてくれています。
確かに雷の光は一瞬で消えてしまいます。
しかし、眼を閉じればその光はいつまでも残っています。
私達の命も同じなのではないでしょうか。
人の命というものは長い宇宙の歴史の中では、本当に一瞬の出来事です。
確かに亡くなった方の命はそこで消えてしまいます。
しかし、雷の光が目に焼き付いて消えないように、私達は亡くなった方のことを考え続けることができます。
そう考えると、
この世に人が生まれてくることは 雷が大空に激しく鳴り響くように瞬間的であり・・・
という言葉は、「人の命は短いから悲しいね」という意味ではなく、短い命をどうすれば輝かせ続けさせることができるのかを教えてくれているように感じます。
今回は
お葬式は呪文だけを唱えているのではありません。
仏教の教えが書かれたお経をお唱えすることで、その教えを学んでいるのです。
と覚えてもらえればうれしいです。
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