坐禅中は動いてはいけないのでしょうか?

坐禅中は動いてはいけないのでしょうか?
坐禅中は動いてはいけないと思っていました。
しかし、そうではないことを教えてくれた人がいました。
今日、大変ありがたい御縁をいただき地元の中学校の卒業式に出席させていただきました。
卒業式は厳粛な雰囲気の中、生徒がビシッと動き、大変素晴らしいものでした。
卒業生の顔を見ていると、私が東光寺(静岡市清水区横砂)の副住職になったころに初めた子供坐禅会や寺子屋体験に参加してくれた子供達が何人もいました。
あんな小さかった子供達が中学校を卒業するとは・・・
自分がいつの間にか年を重ねていることを実感しました・・・
それと同時に、卒業生の中に強烈に印象に残っている女の子がいることにも気がつきました。
その出来事は女の子が小学校2年生か3年生の頃のことです。
彼女は毎日のように子供坐禅会に参加してくれていました。
ある日、彼女は保育園に通う弟と一緒に坐禅会に参加しました。
弟君はかなり不安そうにお姉ちゃんの後ろをついてきました。
2人は並んで座布団に座りました。
やがて坐禅が始まりました。
私は「坐禅中は動いてはダメだよ!」と注意をしてから警策を持って子供達の前を歩きます。
警策を持って歩いていると子供達の動きはとても小さくなります。
このとき、弟君は”警策を持った顔の怖い男が目の前を歩き回る”というこれまでの人生で経験のないような体験だったせいか、静かに涙を流し始めました。
でも、「坐禅中は動いてはいけない」という注意もされているので動けない・・・
弟君が泣いていることに私が気がついたのと同時に、お姉ちゃんも弟君のピンチに気がつきました。
すると彼女は何の迷いもなく、すっと手を出して弟君の涙を拭いてあげたのです。
自然な動きで、小さな女の子が弟の涙を拭くし姿があまりにも美しく、私はその光景に見入ってしまいました。
私はこの光景が今でも忘れられません。
自分が同じ状況にあったらどうしていただろうかと考えます。私なら
「動いちゃダメって言われてたし・・・ でも困っている人がいるから助けなきゃいけないし・・・」
と迷います。さらに、
「でもここで困っている人を助ければ褒められるかな!? それとも動いたら怒られるかな? 警策で叩かれたら痛そうだし、何もしなければ怒られないから 気がつかなかったことにしよう!」
などと考えていたでしょう。
彼女のように困っている弟を助けようとはしなかったと思います。
しかし、彼女は弟を助けたのです。私は助けたことにも驚いたし感動しました。でも一番驚き、感動したのは彼女の動きに迷いがなかったことです。
弟が泣いている → 涙を拭く
何も悩むことのない、自然な動きでした。
坐禅中に動いてよいのか、悪いのか。
そんなことを考えるのではなく 自然と動いた姿に感動をしたのです。
坐禅をすることで、心が調い、私達が生まれたときから頂いている尊い心を実感することができる。
そのために、坐禅中は坐禅に集中する。集中するためには坐禅中は動いてはいけない。
と、私は考えていました。しかし、彼女の弟君を想っての動きこそが「生まれたときから頂いている尊い心」の働きだったのです。
彼女の迷うことなく坐禅中に動く姿が
「坐禅中は動いてはいけない」という想いに縛られ、「困っている人がいたら助ける」という当たり前のことすらお前は忘れているぞ!
と教えてくれたのです。
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