開山無相大師と十牛図【その9-2】

東光寺(静岡市清水区横砂)は臨済宗妙心寺派のお寺です。
臨済宗は禅宗とも言われる禅の教えを大切にする宗派であり、本山は京都にある妙心寺です。
ですから、禅の教えや妙心寺の最初の住職である開山無相大師【かいさん むそうだいし】の教えを大切にしています。
この禅の教えと無相大師の生涯を説いた「無相大師の禅・十牛図 (則竹秀南老師著)」と出会い、その内容を平成30年春の子供坐禅会で話をさせていただきました。自分自身の備忘録としてその内容をまとめたいと考え記事にさせていただいています。
十牛図【じゅうぎゅうず】とは、本当の自分(仏の心)を見つけるための過程を10の段階に分けて示した禅の書物です。10の段階を1つずつ紹介させていただきます。
今回は、その9回目の続編です。
その9 返本還源【へんぽんげんげん】
仏の心で感じれば、山の木々の緑が、花の美しさが、川の流れが、人の姿が、鳥の声が、そのまま写し出され、聞こえる。
「そのまま」ということを表す無相大師の逸話があります。
無相大師は悟りを開かれた後、修行していたお寺を離れ田舎の農村へと移り、修行を続けながら、村人と共に農村での生活を送ったのですが、やがて妙心寺の最初の住職となって天皇(皇族)の先生として呼ばれます。
呼びに来たのは、なんと皇族の使い(勅使【ちょくし】)の者です。
毎回のいろんなことをお願いしていた無相大師が天皇家の先生となるなんて村の人達はビックリです。
無相大師は村を離れ京都に向かうことになりますが、村の人達は別れを惜しみ涙を流したそうです。
また、飼っていた牛も別れを惜しみ涙を流したそうです。
この時、一組の老夫婦が無相大師に
「今まで、そんな立派な和尚様だと知らず、いろいろと手伝ってもらって申し訳ない。ここで別れてしまったら会うことはできないだろうから、何か仏教の大切な教えを教えてください。」
と頼んだのです。
無相大師は
「わかりました。では2人ともこちらに来てください。」
と答えたのです。そして近づいてきた2人の頭に手をかけると、ごっちん2人の頭をぶつけたのです。
びっくりした2人は思わず、
「痛い!」
と声を出しました。それと同時に無相大師は
「そこだ!」
と言ったのです。
教えを教えて欲しいという老夫婦の頭をぶつける・・・
驚きました。
しかし、これも無相大師の教えなのです。
人は「そのまま」に、様々なことを見えることを示した句です。
人はどうしても自分の都合で物事を見てしまいます。
偏見を持て判断をしようとしてしまいます。
しかし、頭をぶつけた瞬間は
「痛い」
しか言えないのです。
その後に
「誰だ??」とか「何がぶつかったんだ!?」と意識して考えてしまうのです。
頭をぶつければ「痛い」と叫んでしまうのです。ただそれだけなのです。
それ以外の感情や想いは「痛い」の後に勝手にやってきます。
この後からやってくる感情にとらわれない姿こそが、返本還源【へんぽんげんげん】とのことです・・・
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