大般若シリーズ【12】 大般若では何を願っているの?? ~回向編 その3~

先日、「YOUは何しに日本へ?」という番組を見ました。
空港で訪日外国人に声をかけて、日本にやって来た目的を訪ね、その後密着をするという番組です。
この番組で紹介されていた1人の女性の訪日理由が大変興味深い物でした。
アメリカからやって来た女性は日本の大学に短期留学でやってきました。
番組が密着をしたのは富士山と樹海を訪ねた日でした。
女性が日本にやって来たのは「日本人は生と死を分けない考えを持っている」ということを知って日本に興味を持ちやってきたのです。
そして、富士山を見に行くとき神主が行う宿泊施設である御師の家【おしのいえ】に宿泊をしました。
ここで女性は自分の体験を神主さんに話します。
女性は祖母に育てられたこと。
大好きだった祖母は自分が20歳の時に亡くなったこと。
そして、祖母が亡くなったが近くで見守ってくれている気持ちになったこと。
しかし、友人に話すと気味が悪いと言われたことを話したのです。
アメリカでは生と死を分けて考える。死んだ人がいたらゴーストとして恐れるそうです。
神主さんは女性の話しを聞いて、祖母が亡くなったが近くで見守ってくれている気持ちなったことに疑問を感じることなく共感をしました。その姿に女性は感動したのです。
亡くなった人に見守られている。という感覚は日本では誰に教えられるということなく、様々な習慣を体験することで自然と身に付いてくる感覚だと思います。
この感覚を求めて日本にやってくる人がいることを知って、改めて大切な習慣をいただいていることを実感いたしました。
東光寺(静岡市清水区横砂)では、毎月1月7日に大般若祈祷会が行われます。お寺関係者の間では大般若【だいはんにゃ】と呼ばれている行事です。
この法要は1300年以上続くもので、六百巻にもなる「大般若経【だいはんにゃきょう】」という経典を読み、その功徳によって全ての障害が取り除かれ仏道が成就することを祈る儀式です。
※過去の開催報告では写真も使って方法全体の流れを説明していますので、興味のある方はご覧ください。
以前、大般若祈祷会でお唱えする回向について紹介をさせていただきました。
※大般若では何を願っているの?? ~回向編 その1~ はこちらをご覧ください。
※大般若では何を願っているの?? ~回向編 その2~ はこちらをご覧ください。
回向【えこう】とは法要の功徳(善い行い)が自分の為だけではなく、全ての人達の為になりますようにと最後に祈るものです。
この大般若祈祷会に参加したことがある方の中には回向が他の法要比べると長く感じる人もいるかもしれません。
長く感じない場合は、いつもより早口に感じるかもしれません。
それは、他の法要に比べると「ある部分が丁寧」だからです。
ある部分とは法要を見守ってくださる仏様・神様のお名前です。
大般若祈祷会の回向では法要を見守ってくださるありとあらゆる仏様・神様のお名前をお唱えするのです。
そのため、いつも通りの速さでお唱えすれば時間は長くなり、いつも通りの時間に納めようとすると自然と早口になってしまうのです。

未熟者の私は途中で噛んでしまうのではないかと不安になり、直前まで練習をしています。
その姿が面白いのが今年はカメラマンの娘が写真を撮っていました。
・・・私は気がついていませんでしたが・・・
「そんなに長いなら、みんなまとめてしまえばいいのではないか?」と感じるかもしれません。
しかし、私は丁寧に多くの仏様・神様の名前をお唱えすることには大きな意味があるように感じています。
臨済宗妙心寺派の生活信条に
生かされている自分を感謝し、報恩の行を積みましょう
とあります。
大切なことなのについ忘れてしまうのが、私達は関係が濃い薄いに関係なくありとあらゆる周囲の方々に支えられ生かされているということです。
私は1年に1度、ありとあらゆる仏様・神様のお名前をお唱えすることで、自分自身が周囲の方々に支えられていることに思い起こし感謝する機会になっていると感じています。
大般若祈祷会でお参りをされる際には法要の最後にお唱えする回向の中でも後半部分の、ありとあらゆる仏様・神様のお名前に耳を傾ていただければと願っています。
- 関連記事
-
- 大般若会 【だいはんにゃえ】 令和2年 (2020/01/07)
- 幸福になるために降伏する (2019/01/10)
- 大般若シリーズ【12】 大般若では何を願っているの?? ~回向編 その3~ (2018/02/14)
- 大般若シリーズ【11】 大般若では何を願っているの?? ~回向編 その2~ (2018/02/13)
- 大般若シリーズ【10】 大般若では何を願っているの?? ~回向編~ (2018/02/12)