大般若シリーズ【3】 転読 その1

大般若祈祷会【だいはんにゃ きとうえ】に参列された方が興奮気味に
「叫んで パラパラして また叫ぶ! すごい迫力だったね!!」
と法要の中で一番盛り上がる部分を簡潔にまとめてくださったことが印象に残っています。
東光寺(静岡市清水区横砂)では、毎月1月7日に大般若祈祷会が行われます。
お寺関係者の間では大般若【だいはんにゃ】と呼ばれている行事です。
この法要は1300年以上続くもので、六百巻にもなる「大般若経【だいはんにゃきょう】」という経典を読み、その功徳によって全ての障害が取り除かれ仏道が成就することを祈る儀式です。
※過去の開催報告では写真も使って方法全体の流れを説明していますので、興味のある方はご覧ください。
「叫んで パラパラして また叫ぶ!」これを仏教の言葉では「転読【てんどく】」と言っています。
もう少し詳しく説明しますと、
1.叫んで
2.パラパラ
3.叫ぶ
と3つのことをしています。

パラパラしたり、

叫んだり
「1」の叫ぶでは
「大般若波羅蜜多経 第○○ 唐三蔵玄奘奉詔訳」
【だいはんにゃ はらみたきょう だい○○かん とう さんぞうげんじょう ぶじょうやく】
と大声でお唱えをしています。
これは、600巻ある大般若経の第○○巻を今から転読することを声高らかに宣言をしているのですが、
唐三蔵玄奘奉詔訳 【とう さんぞうげんじょう ぶじょうやく】
という言葉は、「唐の時代に三蔵玄奘によって訳された」という意味がありますので、「大般若波羅蜜多経 第○○ 唐三蔵玄奘奉詔訳」は
唐の時代に三蔵玄奘によって訳された 全部で600巻ある大般若経というお経の ○○巻目を今から読みます!
と宣言しているのです。
三蔵【さんぞう】という言葉を聞くと三蔵法師【さんぞうほうし】を思い出し、西遊記を連想される方も多いのではないでしょうか。
西遊記に登場する三蔵法師のモデルこそが、実際に中国から命を懸けてインドに渡り、仏教の教えであるお経を中国に持ち帰った「玄奘さん」なのです。
仏教語辞典に
仏の教説を記す「経」と,戒律を記す「律」と,経を註釈・解説した「論」といい、この3種に全てに精通したものを三蔵という
と書いてあります。
仏教の教えである多くのお経をインドから中国にもたらした「玄奘さん」はまさに、この「三蔵」であったため三蔵法師とも呼ばれ、西遊記のモデルにもなっているのです。
経本をパラパラとする前に、
唐三蔵玄奘奉詔訳【とう さんぞうげんじょう ぶじょうやく】
と尊い三蔵玄奘によって訳されたことを叫ぶとき
今、目の前にある大切な経典は並々ならぬ努力があってここにあることを実感し、感謝せずにはいられません。
大般若祈祷会にお参りいただいたとき
「とう さんぞうげんじょう ぶじょうやく」
と聞こえたときには、長い道のりを命をかけて渡った方々がいたこと、そしてこの諸先輩方、御先祖様のおかげで今こうして幸せにくらしていけることを思い起こしていただければ、法要がより味わい深いものになるのではないでしょうか。
※「2」パラパラ 「3」叫ぶ については後日紹介させていただきます。
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