子供に坐禅会で話したこと 第283番 長者の不幸1 【仏教説話25】
子供坐禅会(平成29年冬休み:テーマは仏教説話)で話した内容を紹介させていただきます。今回は
仏教説話シリーズ その25 【長者の不幸1】
です。

東光寺(静岡市清水区横砂)の子供坐禅会では毎回お寺や仏教に関係する話しをしています。
そして、話の内容にあった「仏教豆知識シール」を参加者に配布しています。
自分自身の備忘録も兼ねて紹介させていただきたいと考えています・・・・
※以下の内容は子供向けに話したものです。
皆さんはお家の人に怒られたことがありますか。
厳しく何か言われたことはありますか。
多くの人が「はい」と答えると思います。
でもそんな時どう思ったでしょうか。
「うるさいなあ」
と、どうしても思ってしまいますよね。
でも自分を怒ってくれる人がいることがとっても幸せなんことだと教えてくれるお話があります。
「長者の不幸」というお話があります。
長者というのはお金持ちのことです。お金をたくさん持っている人の事を昔は長者と言いました。
この長者さんが不幸になるというお話です。「お金がたくさんあれば不幸になんかならない」そう思うかもしれませんが実はお金持ちの人でもあっという間に不幸になってしまうことがあるというお話です。
昔々のお話です。あるところにお金持ちの家がありました。お金持ちの家にはいっぱい仕事をしてお金をたくさん稼いでいるお父さんと、そのお父さんが大切にしている一人の息子がいました。
息子の名前は「太郎」。
しかし、残念ながら太郎は全く仕事をしません。
それでもお父さんは太郎を大切にしているので、仕事をしなさいとか勉強しなさいなどと厳しいことは一切言わず、大切に育てていたそうです。
お金がたくさんあるので太郎が
「これが欲しい、あれが欲しい」と言えばすぐ買ってやり、「あそこに行きたい、ここに行きたい」と言えば連れていったそうです。
太郎もそんなお父さんのことをありがたいなぁと思いながらいつもいつも甘えて生活をしていました。
ところがある日のこと、父さんが事故で突然なくなってしまったのです。
さあ大変です。
しかし、今まで仕事をしてくれていたお父さんがいなくなった太郎でも少しは働くかと思いましたが、なんと太郎はまったく働きません。
お父さんが残してくれた財産をどんどん使って、とうとうお家のお金を全部使い終わってしまいました。
お金がなくなってしまい、住む家を失った太郎は外に放り出されフラフラと街中をさまよっていたそうです。
そんな時どこかで見たことがある男の人と太郎は出会いました。
太郎は挨拶をするとその男性は父親の親友だったのです。男は親友だった太郎の父親が亡くなった事を知ると大変悲しみ、そしてお金がなくてフラフラしている太郎がかわいそうだと思って自分の家に招待することにしました。
大切な友達の子供だからということで、この男も太郎が何か欲しいと言えば買ってやりながら大切に育てました。
そんなある日、この男の娘と甘やかされて育った太郎が結婚をすることになりました。
親友の子供が自分の娘と結婚してくれるということに喜んだ男性は今までよりもたくさんのお金を使って自分の娘とその旦那さんである太郎を大切にしたそうです。
ところが結婚をしたにも関わらず、太郎はまったく働きません。それどころか優しくしてくれる男に色々な物を買ってもらっては無駄にしていました。
さてさて娘の父親はだんだん悩み始めます。自分の大切な娘がこんなにもだらしない男と結婚してしまったことで娘が不幸になるのではないかと心配になってきました。そこで、ある日のこと相談をして娘と太郎を別れさせようと考えたのです。
しかし、そのことを知った太郎は突然刃物を振り回し、妻つまりお金持ちの娘を殺してしまったのです。
そして自分が刺してしまったことで気持ちが乱れ、とうとう 太郎は自殺をしてしまいました。
お金持ちのお父さんは自分の娘が殺されただけではなく親友の息子である太郎君も同時に失ってしまったのです。
なぜ、長者は不幸になってしまったのか。
それは、甘やかされて育った太郎君をさらに甘やかしてしまったからなのです。
甘やかすことなく、時には厳しく、時には優しく、「太郎くんがどうしたら成長できるのか」ということを考えてお金持ちの男性が接していれば、決してこのような結果にはならなかったはずです。
お金持ちの男性が不幸になった理由はまさに自分自身に原因があったのです。
ですから、このお話を通して友達に対してもっと厳しいことを言っていいよということではありません。
お家の人や学校の先生、みんなのことを考えてくれる人から時々厳しい言葉や怒られたりすることがあるかもしれません。だけどそれは皆が幸せに生きていくために必要で、大切なことなんです。そのことを決して忘れることなく毎日の生活を送っていくことが大切ですよと、この「長者の不幸」という話は教えてくれています。
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