子供に坐禅会で話したこと 第256番 【耆婆:ぎば】
子供坐禅会(平成29年春休み:テーマは涅槃図)で話した内容を紹介させていただきます。今回は
涅槃図シリーズ その14 【耆婆:ぎば】
です。

東光寺(静岡市清水区横砂)の子供坐禅会では毎回お寺や仏教に関係する話しをしています。
そして、話の内容にあった「仏教豆知識シール」を参加者に配布しています。
自分自身の備忘録も兼ねて紹介させていただきたいと考えています・・・・
※以下の内容は子供向けに話したものです。

お釈迦様が亡くなる時の様子を描いた図を「涅槃図」と言います。 涅槃図のなかにはお釈迦様が亡くなった訃報を聞いて駆け付けた多くのものが描かれています。
さて、皆さんは病気になったらどこへ行きますか?
「寝ていれば治るよ」と言う人は布団の中へ行くでしょう。
薬がほしい人は薬局に行きます。
それでも治らない、または立っていられないくらいつらい時にはすぐに病院へ行くことになります。
病院へ行くとお医者さんに診てもらうことができます。
その瞬間に病気が治るわけではありませんが、お医者さんに診てもらっているだけでホッとするものです。
では、お釈迦様やお釈迦様の所で修行をしていた人達はどうしていたのでしょうか。
やっぱりお医者さん診てもらっていました。
そして、そのお医者さんが今日のシールにもなっている耆婆【ぎば】です。
シールにあるように耆婆はただのお医者さんではありません。
お釈迦様の主治医であり歴史に残る名医とも言われます。
医師の祖、つまり歴史上もっとも素晴らしいお医者様とも言われ、当時から多くの人に尊敬されていたました。
耆婆自身も仏教を深く信じて信仰し、お釈迦様の教えを聞いていたそうです。
そんな、耆婆が涅槃図には描かれています。

ここです!!
お医者さんということで、豆知識シールでは

このように描いています。
そんな、耆婆の有名な逸話があります。
お釈迦様の弟子に阿難【あなん】という方がいました。
以前、涅槃図の話しで出てきていますので覚えている人もいるかもしれませんが、

阿難はお釈迦様の教えを最もよく聞き、全てを覚えたお弟子様と言われています。お釈迦様の話しが好きで好きでたまらなかったので、お釈迦様が話をしているときに背中を手術されても気がつかなかった人です。
この手術をしたのが耆婆です。手術をする技術も素晴らしいのですが、患者さんである阿難の特徴をよく知って思いやることができるために実行することができる方法です。
そして、この耆婆が涅槃図に描かれています。これは何を意味するのでしょうか。
どんなに素晴らしい技術や相手のことを思いやる心があったとしても全員の命を救うことはできません。
逆に言えば、誰の命であっても必ず終わる時が来るのです。どんな名医であっても、どんなに素晴らしい薬があったとしても必ず人の肉体は滅びていくこと涅槃図は医者の神様と言ってもよい耆婆を描くことで伝えてくれているのです。
では、必ず死ぬなら適当に過ごしていいのでしょか。勝手に命の長さを変えてしまっていいのでしょうか。
耆婆の逸話に次のような話もあります。
耆婆が若い頃に医者になる為に勉強をしていた時のテストの話しです。
耆婆の先生から、
「10キロ四方の土地を区切り、この土地の中で薬にならない草木があれるか」
と聞かれます。耆婆は草木を調べましたがどれも薬になるものばかりで、薬にならないものは見つかりませんでした。耆婆は
「薬にならないものはありません」
と答えると先生は
「お前は素晴らしい医者だ」
と言って、耆婆に医者の免許を与えたそうです。
この話から分かることがあります。どんな物でも無駄なものはないのです。どんな小さなものでも、どんなに軽い物でも無駄にしてはいけないのです。
え、捨てちゃダメなの??
と思うかもしれません。
え、だったら「ゴミ屋敷」と言ってたまにテレビに出てくる人は素晴らしい人なの??
と、思うかもしれません。
もちろん違います。無駄にしないというのは、「なんでもとっておきなさい」ではもちろんありません。ゴミ屋敷を見ると、使えるものが決して使えません。そこに物を大量に置いてしまうことで、その場所を無駄にしてしまっているのです。草木も、ただそこに生えているだけでは薬になりません。薬にするためには使いこなさなくてはいけないのです。大切なことは、ただ取っておくことではなく活かしきることなのです。
耆婆のような名医でも命を救うことはできない、しかしその命を使い切る、活かしきることの大切さを涅槃図の耆婆は教えてくれているのです。
そして、命を活かしきるためには、物だけでなく時間も大切にして努力をしなくてはいけません。その努力の1つが今日のように坐禅をすること、お参りをすることです。昔から伝わってきた良いこと、そしてたくさんの人達が一生懸命考えた良いことをこれからも実践していってください。
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