苦を滅する8つの正しい実践 八正道【はっしょうどう】 その4 正業【しょうごう】

以前私は、中学校の教員をしていました。
このことを話すと
「何を教えていたんですか」
と聞かれることがあります。素直に
「理科です」
と答えます。
もちろん嘘ではありません。理科を教えていました。
しかし、教員として理科の授業時間と同じくらい、下手をするとそれ以上に時間を使ったのは生徒指導だったと思います。
正確な時間は計測していませんが、教員生活の1/3は理科、1/3は卓球部の指導等、1/3は生徒指導をしていたと思います。
具体的な内容は書けませんが、本当に多くの指導を経験させてもらったと思います。
お釈迦様は苦を滅し、理想を実現するためには、8つの正しい道を修行することが大切であると説かれました。
これを八正道【はっしょうどう】と言います。
8つの正しい道の1つに正業【しょうごう】があります。
殺すこと、盗むこと、裏切ることなど悪い心を起こさずに正しい行動をすることを説く言葉です。
教員をしているときに、多くの指導をした1人の生徒がいました。
彼が2年生のときは毎日のように指導をしました。
いわゆる不良行為を彼は繰り返していたためです。
同じことをして叱られることもあれば、前日とは異なる不良行為をして叱られることもあります。
しかし、彼はある日を境に叱られることが無くなりました。
あるきっかけがあり、彼は不良行為をしないと決意したのです。
そして、見事に実行することができたのです。
彼が何を変えたのかと言えば、「距離感」でした。
それまで、付き合っていた不良行為を繰り返す先輩たちや同級生と距離を置いたのです。
そして、タバコなど身近にあった様々な不良行為を誘発する物とも距離を置きました。
もちろん彼自身の強い信念があったからこそできたことではありますが、悪から距離を取ることは非常に重要なことです。
「悪」といわれると、不良グループや、反社会的組織など大きなものを思い浮かべてしまいますが、「悪」は大きなものだけではありません。
勉強に集中したいのにテレビがついていれば集中はできません。
この瞬間はテレビが悪となります。
坐禅を一生懸命しようとしているのに、周囲が騒がしい音がすれば集中できないものです。
勉強に集中したければテレビから離れますし、周囲がうるさいのであれば静かな場所を求めることもできます。
私達はこれまでの経験から「悪」から距離をとる方法を知っています。
その実践こそが正業のひとつとなるのかもしれません。
「悪いことをしない生活」を実践しようとするとき、悪を倒そうと試みるものです。
もちろん自分の心の中にある「悪」と戦うことは大切なのですが、その第一歩になるのが距離を取ることだと考えています。
そして、2歩目が本当の仲間を大切にすることになります。
仲間とは友達だけでなく、職場の同僚、学校のクラスメイト、そして自分と関わりのある全ての人達のことです。
相手のことを思いやる気持ちで接することができれば、そこには「悪の心」が発生することはありません。それこそが正業の実践でもあるのです。
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