ありがたい御縁に恵まれ、久しぶりに遠羅天釜【おらてがま】を読みました。

私は、江戸時代の大変有名な白隠禅師という臨済宗の和尚様が残された
「動中の工夫は 静中に勝ること 百千億倍す」
と言う言葉が好きで、お話をさせていただくときなどに紹介をさせていただくことが多くあります。
このブログでもたびたび紹介させていただいてきました。すると、
「この言葉の出典と言いますか、どこに残されているのか教えていただけませんか。」
との御質問をいただきました。質問をいただいたとき
「言われてみれば、どこだったのでしょう???」
と私の頭の付近には?【はてな】がたくさん浮かんでいました。
よく妻に驚かれるほど容量の小さな「脳」と呼ばれる記憶装置を異常音がするほどに稼働させてみました・・・
すると少しだけ思い出しました。
初めて聞いたのは修行をさせていただいているときでした!!
臨済宗の修行には接心【せっしん】と呼ばれる、坐禅を懸命に取り組む期間があります。ひたすら坐禅です!
この、接心が始まる際に亀鑑【きかん】という教えが読まれます。
修行をする場所によって違いがあるそうですが、私が修行をさせていただいた場所では亀鑑の中で
動中の工夫は 静中に勝ること 百千億倍す
が出てきました。
その後、白隠禅師の書にこの言葉が残されていること、多くの和尚様の話しの中で
「白隠さんが、動中の工夫は・・・・ と言ったんですよ」
と言った趣旨の話しをされていたので出典を読むという基本的な動作がおろそかになっていました。
そこで、小さな記憶装置と書籍を活用していったところ、白隠禅師の遠羅天釜【おらてがま】という本に「動中の工夫は・・・」という文字を見つけました。
遠羅天釜は4部作で、この1部である「巻の上」に動中の工夫は登場します。「巻の上」は、白隠禅師が説いた健康法であり、坐禅中だけでなく、日常生活における「動中の工夫」の重要性を示したものです。
そして、遠羅天釜【おらてがま】「巻の上」の訳には以下のような一文があります。
悟りによる得力とは何か。大慧禅師【だいえぜんじ】は「動中の工夫は 静中に勝ること 百千億倍す」と言われている。博山大艤【はくざんたいぎ】禅師は「動中の工夫を成すことは百二十斤の重荷を担いで羊額嶺を登るようなものだ」と言われている。
これは、動中と静中の隔てを忘れてしまうほど純一に工夫し修行することが大切なのである。だから「真の修行者は、活動していても活動していると意識せず、坐っていても坐っているとは意識しない」と言われるのである。
とりわけ、自己の心の奥底、自性の淵源を徹底して極め、いついかなる所にあっても用いることのできる気力を得るには、動中の工夫にまさるものはない。
ここで、「動中の工夫・・・」という言葉が登場するのです。しかし
、
大慧禅師【だいえぜんじ】は「動中の工夫は 静中に勝ること 百千億倍す」と言われている。
と書いてあります。
まさか、「動中の工夫・・・」白隠禅師の言葉ではないのか!?
出典は大慧禅師【だいえぜんじ】なのか!?
そんな考えが頭をよぎります。
そこで、遠羅天釜【おらてがま】の原文を読んでみようと本を読み進めると、原文の注釈に
大慧禅師の教えにはこのとおりの言葉は見えない。
と言ったようなことが書いてありました。
つまり、これまで多くの仏教や禅の教えを伝えてくださった祖師方が残された言葉を学んだ上で、白隠禅師が後世の私達に伝えた言葉こそが
「動中の工夫は 静中に勝ること 百千億倍す」
であったのだと知ることができました。
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