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小さな心遣い と おもてなしの心

以前、あるお寺で総茶礼【そうざれい】をいただいたことがありました。




総茶礼とは 単純な言葉で説明すると みんな(総)で、お茶をいただく(茶礼)  ことです。



「お茶をいただく」と言っても決して喫茶店で優雅な時間を過ごしながら、好きなケーキと飲み物を注文して飲食をするわけではありません。



昔からの作法にのっとり、ひとつの釜で沸かしたお茶を飲み和合を深めることが茶礼の目的です。




この日も、淡々と茶礼が進んでいくのかと思っていましたが、お菓子が運ばれてきたときに「ある違い」を発見しました。小さな違いなのですが、この違いに感動をしました。




お菓子を出す場合懐紙【かいし】と呼ばれる和紙にお菓子を乗せることがあります。



そして、茶礼に参加する人数が多い場合などには懐紙とお菓子をお盆に並べて運び、お茶を飲み側の方にお盆から受け取っていただくことがあります。





500小さな気遣い 懐紙1606303
通常ならば懐紙が並んだお盆は、このような状態になります。(※再現)





500小さな気遣い 懐紙1606302
しかし、この時はお盆に並んだ懐紙がこのような状態になっていたのです。(※再現)




懐紙の隅が少し折ってあるのです!!






500小さな気遣い 懐紙1606304
お菓子を乗せればこのような状態です。(※再現)




写真の懐紙は分かりやすいように大げさに折りましたが、本物は上品に少しだけ折ってありました。



少しの違いです。



しかし、この違いは受け取る側にとって大きな違いになります。



小さな心遣いに 大いなる おもてなしの心 を感じました。




仏教には、




無財の七施 【むざいのしちせ】




という「雑法藏経(お経の)」の中で示される仏教の言葉があります。




地位や財産がなくてもできる、お金の有無にこだわらずに、いつでもどこでも、だれにでも出来る7つの布施行【ふせぎょう】のことです。




その中の1つに



身施【しんせ】



があり、




礼儀正しい振る舞いや、身をもって奉仕を行うこと。人の嫌がる仕事でも喜んで、気持ちよく実行すること。




を意味しています。




懐紙の隅を折ることは意外と面倒ですし、やらなくても誰からも文句は言われません。しかし、この日の茶礼ではお菓子を用意してくださった方が「身をもって相手の為に何かをすること」の実践として懐紙の隅を折ってくれていたのです。




お菓子とお茶を、



この布施の心が、お菓子を運び人や受け取る人だけでなく、この茶礼に関わる全ての人に届いていると!



感じながら、おいしくいただきました。
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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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