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寒松一色千年別なり

600写経会 絵葉書作成ファイル 86 禅語 寒松一色





東光寺【静岡市清水区横砂】の写経会では毎月絵葉書を配布しています。


これまでは私が撮影した写真に文字を合成して印刷をしてきましたが、今回からしばらくは「絵」葉書にしようと思います。


「絵」はこれまで子供坐禅会で配布する仏教豆知識シールなどの絵を担当してきた妻に書いてもらいました。


禅の言葉に

寒松一色千年別 野老拈花万国春

という言葉があります。



寒松一色千年別なり 【かんしょう いっしょく せんねん べつなり】 

野老花を拈ず万国の春 【やろう はなをねんず ばんこくのはる】



と読むことができます。



寒中に佇む一本の松が変わらぬ緑を保ち続ける姿は、昔から変わることなく私達を照らし続ける真理を表し、その下で村の老人が花を楽しんでいる姿は真理を受けて穏やかに過ごす姿を示しています。



臨済録という中国唐代の禅僧で臨済宗開祖の臨済義玄の言行をまとめた語録に出てくる言葉です。





河野太通老師は著書“床の間の禅語”の中で



寒松一色千年別なり
寂然(じゃくねん)と人の世を諦観(ていかん)するが如く老松(おいまつ)が屹立(きつりつ)している。樹齢はいかほどかわからないが、相当な年輪であろう。風雪に耐えて、なお生き続け、しかも変わらぬ美しい緑をいつも保っている。そんな松の姿には他の樹木にはない格別の趣があります。



野老花を拈ず万国の春 
そのみごとな松の下で、一人の老人が花を楽しんでいる。まことにのどかな風景です。
風雪に耐え抜いてきた松のように、世の風波を生き抜いてきたからこそ、翁には超然たる風格がある。悠々世事を忘れて春ののどかさを楽しんでいる村翁の心を、味わいたいものです。その村翁の心こそ春です。この翁の心をもってすれば、世はまさに万国の春です





と説いています。




今回の絵を描くために妻にお願いしたのは、私が見た光景を描いて欲しいというものです。



私が見た光景というのは今年のお正月にお会いした和尚様の姿です。




大変お世話になった和尚様が体調を崩していると聞いて、会いにいった時の話しです。


その和尚様は私が幼少期の頃からお世話になっていた方で、常に周囲に暖かく接しながらも禅僧としての生き方を貫いた方でした。

お寺の境内も常に調い、年齢を重ねても精力的に仏教・禅の布教の為に御尽力をされていました。


そんな尊い方にも病魔は容赦なく襲いかかりました。


そんな和尚様は御自宅で病気の治療をされていましたが、医師から「もう長くはない、もって後数日です。」と告げられていたのです。



私も、病気のことや余命のことを知って大変驚きました。


そのような状態でしたが、訪ねていった私を和尚様は受け入れてくださり話をすることができました。

実際にお会いしたとき、声を出すことも大変なほど苦しそうに息をする和尚様の姿に驚きましたが、その際に和尚様が発せられた言葉を忘れることができません。


これまで、多くの方を導き、尽くされてきた、その和尚様が布団の上で静かに手を合わせて


「たくさんの人のおかげで良い人生をおくることができました。ありがたい。ありがとう。」


とおっしゃったのです。



自分を律しながらも人々に尽くしてきたにも関わらず、最後に周囲への感謝の気持ちが出てくる姿があまりに尊く、そしてこのように尊い方と別れなければならないかと思うと、私は涙を抑えることができませんでした。






この言葉を発せられた和尚様の姿こそが


寒松一色千年別なり  野老花を拈ず万国の春


仏教の教えを大切にしながら、その教えと共に生き抜き、世の風波を生き抜いた風格であり、万国の春を示してくださっていたように感じました。



このような方と御縁をいただいたことに感謝し、同じような生き方をするために少しでも精進を重ねていこうと心に誓いました。



同時に「この姿を伝えたい」と考えて妻に絵を描いてもらいました。



どこかで風雪に耐えて、なお生き続け、しかも変わらぬ美しい緑をいつも保つ松の木を見たときに、そのようなお坊さん(禅僧)がいたことを思い出していただければ嬉しいです。
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人物紹介

新米和尚

Author:新米和尚
横山友宏
東光寺 副住職
【静岡市清水区横砂】

中学校で理科を教えていた男がある日突然和尚になった。(臨済宗妙心寺派)そんな新米和尚による、仏教やお寺についての紹介をします。 気軽に仏教やお寺に触れていただければと思います。


元:中学校教師
  (理科・卓球担当)

現:臨済宗妙心寺派の和尚
2人の娘の父親であり、育児にも積極的に参加し!?失敗を繰り返す日々を送る、40代を満喫しようとしている どこにでもいる平凡な男

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