絵葉書法話 32【三昧】

絵葉書【32】三昧
まだ幼い娘と山を登っているときのことです。
娘は初めて歩く道にビクビクしながら、鳥の声が聞こえればキョロキョロ、風で葉っぱが揺れる音が聞こえればキョロキョロしていました。
なかなか前に進みません。
やがて、ビクビクはワクワクに変わります。
少し歩いては足を止めてドングリを拾い、少し歩いては葉っぱを拾い・・・
やはりなかなか前に進みません。
しかし歩き続け山の頂上が近づいてくるとキョロキョロすることや何かを拾うことを止めて、まっすぐに道の先だけを見るようになっていました。
こうなると、目標としていた山頂にたどり着くことは難しいことではありません。
心を静めて一つの対象に集中し 心を散らさず 乱さぬ状態 を三昧【ざんまい・さんまい】と言います。
仏教語辞典の三昧の部分には
“悟りに至るには三昧が前提とされる”
という一文もあるくらい、心を静めて一つの対象に集中することを大切にしています。
子供が山の頂上を目指して歩き出すが、なかなかゴールできない姿は
様々な迷いや欲望に振り回されて、前向きに進むことに集中できていない私達の姿に似ているような気がします。
山道を歩く子供が最初のうちは怖がったり気を散らして前に進みません。それでも歩き続けると、やがて歩くことに集中します。
歩行三昧です。
同じように私達が迷いや欲望に振り回されて前に進むことができないときも、正しいことを少しでも続けていれば、やがて大きく前進することができるのではないでしょうか。
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